カプコン 『戦場の狼』(北米版)の修理

なかなか状態の悪い『戦場の狼』の北米版を入手しました。こんな見た目からしてもうジャンクという基板でもそこそこ高いのが世知辛い世の中です。あんまりにも汚かったのでママレモンで洗いましたが、それでもまだ小汚いです。

結果から書くと過去に直した『ゲットスター』韓国『テトリス』並に手間が掛かったので、この記事も非常に長いです。お時間のあるときにどうぞ。

国内版だと隠されていますが、北米版はデータイースト販売なのでメインCPU横のカスタムがそのままです。ここが壊れていないことを願わんばかりです。

ROMは正常なのを確認して立ち上げるとぐちゃぐちゃの画面のまま止まります。CPUを取り外したらボロボロだったので交換、SRAMは取り外してチェックに掛けても異常なしでした。

動作品の国内版を持っているので入れ替えながら試してみると、どうやら今回買った基板のフラットケーブルだと動作品のセットでも立ち上がっていません。つまりフラットケーブルに異常があるということです。

フラットケーブルを動作品のものと交換したら立ち上がりました。背景ボードとスプライトボードは動作品、CPUボードのみを今回買ったものにしています。音が出ておらず、テキスト面も壊れています。

テキスト面周りのICを調べてみると7Eの74LS273の出力信号が浮いていました。

少し良くなりましたが、全体的に反転しています。

こういう時に便利なのが回路図で、テキスト面(CHARACTER)の中から「FLIP」とあるのを探してみると4Cがヒットしました。

確かに4Cの74LS86の出力信号が変でした。

これでテキスト面は完治しました。続いてまだ楽そうに見えた背景ボードを見ていきます。

入れ替えると派手に壊れていました。

EPROMの脚が曲がっています。少なくともここを戻せば多少は良くなるはずです。

ちょっと改善しました。

VT_14のデータ信号が浮いていたのでおかしいなと思ったら、(28)の+5Vの脚が腐食して接触していませんでした。そのためROMが動いておらず、データ信号も出ていないということになります。

ソケットは全交換、脚がまだ何とかなりそうなROMは補修します。VT_12と16はもうダメそうだったので焼き直しました。

無事に見慣れた画面へと戻ってきました。

よく見ると一部グラフィックに下線が見えていて気になります。

見直すと補修したROM脚が取れていました。元に戻したら問題無かったので背景ボードの修理は完了でしょう。続いてスプライトボードを見てみます。

何かが出ているけど・・・といった具合です。木もスプライトで描いていたことにちょっと驚きでした。

出力のおかしかった1Aと2AのSRAMを外して調べて見るもチェック機ではOKAYだったのでここではない模様です。

『バルガス』改造『1942』の修理の時と同じく、なにかのICがスプライトの出力そのものに関わっていており、今回はそれが問題があると判断しました。ということで回路図上にある「24/96 OBJECT CONTROLLER」を見てみます。

8Aの74LS10の出力が変でした。74LS10の在庫はなかったので丁寧に取り外してチェックしました。

なかなか派手に壊れていました。

ジャンク基板に74LS10があったのでそこから持ってきたところ、見事にスプライトが出ました。

少し遊んでみると橋とバイク、ヘリの風圧でなびく木のグラフィックが化けていました。ROMデータがおかしいんじゃないかと判断したので、どのROMが怪しいかを検証してみました。

VT_08/09/10を外して起動しても表示がおかしいので、VT_05/06/07に絞られます。VT_05を外して起動してもキャラ化け、VT_06を外してもキャラ化け、VT_07を外すとキャラ化けが消えた・・・ということでVT_07不良と判断しました。

VT_07を焼き直します。

スプライトもバッチリなのでこれでスプライトボードも修理完了でしょう。残るは全く音が出ないというトラブルです。

サウンドCPUのアドレスもデータも不安定に出たり出なかったりします。Z80やSRAMを交換しても症状が変わらなかったので、どこか別のところに問題があるはずです。

調べてみるとYM2203C(38)にクロックが来ていません。Z80と11Eの74LS74だけしか関係していないので74LS74を交換しても変化がありませんでした。

よく見るとサウンドROM(15)が短くなっています。また他の脚も触ると取れたので限界に近い状況だったのでしょう。

脚を修復して戻すとZ80からアドレスとデータ信号などが安定して出ました。ただ交換した11Eの出力だけが出ておらず、Z80へのINTとYM2203Cへのクロックが出ていません。

よく見てみると(14)の+5Vがしっかり付いていません。ここが怪しいと思い先もってソケット化した時のハンダ不良です。ハンダ不良といえばタイトーの製造ミス疑いの高い『ルパン三世』、自分でハンダ不良をやっていた2枚目の『スペースインベーダー』を思い出します。

ハンダを付けると一部PSGの音が出るようになりました。11CのYM2203CはIOAの信号が浮いており、(18)(19)(20)からPSGが出ないので間違いなく故障でしょう。

交換するとPSGは両方出るようになりましたが、FMはまだ出ません。

2203Cの出力はそのままDACのYM3014Bへと行き、(2)からは音が出るはずです。ただ両方とも出なかったのでダブルで死んでいるのでしょう。

ソケット化して別の基板から3014を拝借したところ音が出ました。注文したので到着待ちです。(拝借した3014は元に戻した)

先にフラットケーブルが届いたので装着しました。あとは3014が届くのを待つばかりです。

届いたので交換しました。問題無くサウンドが全て再生されたのでこれで修理完了でしょう。「フラットケーブルがおかしいわけがない」という前提の元でやっていたので、特定までにとにかく時間が掛かりました。持ってて良かった動作する『戦場の狼』と『SPACE INVASION』。

【作業内容】
・基板洗浄
・フラットケーブル交換

CPUボード
・メインCPU交換(不要の可能性あり)
・74LS273交換
・74LS86交換
・サウンドROM脚補修
・YM2203C交換
・YM3014Bx2 交換

背景ボード
・ICソケット全交換
・ROM脚補修x4
・ROM焼き直しx2

スプライトボード
・74LS10交換
・ROM焼き直し