アルファ電子 『カイロスの館』(C) の修理

eBayで見かけたので物珍しさで『カイロスの館』のコピー基板を購入しました。純正基板は2枚構成なのに1枚に収まっているというところが大きな特徴でしょう。

『エクイテス』、『ハイボルテージ』、『スーパースティングレイ』のコピー基板は見たことありますが、ここまで形が違うこの時代のアルファコピー基板は初めてです。

あまりにも汚いのでママレモンで洗いました。フラックスと思われる粘着性のある液体がそこら中に付いているのが謎です。しっかり水気も飛ばしたのでスイッチオン。

この画面で止まります。こういう時は68000(18)のリセット信号を見てみます。

リセット信号が上下にパタパタしています。信号の先を追いかけると68705(カスタム部分)の(2)に来ていました。つまりMPUがもがれているこの基板単体だと詰みです。カスタムを飛ばしたコピーができなかったコピー業者の敗北とでも言えますでしょうか。それはさておきこのままだと汚いパーツ取り基板です。せっかくなのでもう少し粘ってみます。

ジャンクの『名人戦』からALPHA-8511(=68705)を移植しました。

立ち上がりゲームが動いていますがゴミゴミしています。カスタムのソケットがあまりにもゆるゆるだったのが原因に思えたので、これを新品へと交換してみましょう。

フラックスらしき液体がこびりついているだけでなく、ソケットも錆びてるのか全然外れなかったです。しかもスルーホールを抜かないようにしなければならないので、取り外しには非常に苦労しました。

ソケットを新品にして立ち上げると大分画面が安定してきました。ただ明らかに色が出ていないだけでなく、キャラが少しチラチラしています。キャラのちらつきはROM脚磨きと挿し直しで何とかなると信じて対応しました。

5から10のROMを磨いてから挿し直し、11を取り外してみるとソケットがボロボロでした。ボロボロの13番はデータ信号ですので、ここを交換すると確実に改善するはずです。

こちらもフラックスらしき液体がベッタベタでしたので、フラックスクリーナーとエタノールで清掃しつつソケットを付けました。

キャラのちらつきもなくなり色も正常になりました。

純正の『カイロスの館』は36pin+サウンドボードの12pinというハーネスですが、このコピー基板はサウンドボードも含めて36pinにまとまっています。この基板用のハーネスを作っていきましょう。

使われている音声アンプのC1181Hは5が音声出力で7が電源(12V)なので、テスターやオーディオプローブを使ってコネクタを特定します。基本は純正と同じでsyncの裏が12V、Rの裏がSP+でした。

という訳で作ったハーネスはこちら。多分この『カイロスの館』(C)以外使い道はない気がします。ゲームを遊んでみるとPSGとFMの音声バランスが変、具体的にはFMの音量が妙にでかいです。また画面全体がチラチラするときがあります。

BGMの合成はこのR50,R51,R52で行っていました。それぞれYM3014からのFM、YM2203CのSSG部分、PSGが来ており、写真手前側で連結されています。純正基板を調べると全ての抵抗が10kΩなのに対して、このコピー基板はR52(FM)のみ2.2kΩでした。ここを10kΩに交換すると音量バランスは正常になりました。こんなところをわざわざ前オーナーが替えるとも思えないので、製造時からこれだったのでしょう。

画面がチラチラする症状を追いかけていますが、ここはコンデンサが正しく付いているのかを疑いました。

アルファ電子基板のコネクタ付近にあるコンデンサは470μFなのに、220μFが付いているので不安がよぎります。ひとまずここ以外は付いていたコンデンサと同じ容量のものを付けてみましたが、特にちらつきは代わりませんでした。

PSGが弱っている結果ノイズを出している可能性もあるので、それぞれ取り外して新品と交換しましたが症状は改善されませんでした。

元の基板のボリュームは10kΩなのに対しこの基板は1kΩだったので、10kΩに戻しても何も改善しません。逆に音量調整がしづらくなったので1kΩにしました。

元のサウンドボードを見ながらコンデンサの容量を合わせてもノイズが出るので、設計上の問題ではないかとも思えてきます。追いかけた限りではC1181H(5)→100μF→470μF→SP+であり、12Vのラインには1000μFが付いていました。

セラコンが割ともげているので、ダメ元ですが付けていきましょう。

セラコンが付いているべきであろう場所に片っ端から付けてみました。コストカットの一環で割と付いていなかったのではないでしょうか。

画面のノイズは割と解決しましたが、100%の解決とまではいきませんでした。コピー基板ですしこれ以上はどうにもならないと思います。強いて言えば合成音声の音量が小さい気がしますのでもう少し見ます。

効果音用の音声ボリュームから遡って合成音声の最終抵抗を探します。R44に辿り着き、抵抗に22kΩが付いていました。

他が10kΩなのにこれだけ22kΩというのは変なので10kΩに交換します。

ボイスバランスは純正基板に大分近くなりました。1周クリアまで遊びましたがまあ大丈夫でしょう。

LUNCH WAKANAとあるのは、当時アルファ電子で取ってた仕出しの弁当屋とのことです。まだあります。またゲーム中に出てくる犬の名前はチラシだと「愛犬1号 タルボット」とあるので、アルファ電子のあのタルボットでしょう(リンク先は愛犬不在のパート2)。

【作業内容】
・ハーネス作成
・カスタム(ALPHA-8511)追加
・ソケット交換
・ROM脚磨きと挿し直し
・抵抗交換
・電解コンデンサ交換
・セラミックコンデンサ取付